アシェット・デセール。フランス語を訳すとアシェット=お皿、デセール=デザート、つまり皿盛りデザート。ケーキの盛り合わせ?ではなく、もうちょっと妄想していただきたい。料理であれば出来立ての一皿。オープンキッチンでライブ感のある調理に、仕上げは目の前でジューっといった具合である。このスイーツ版がアシェット・デセール。アイスとホットチョコの冷温、フランベによる香りや盛り付けのデザイン性、カリッとしたりサクっとシナっとした食感、これらがぜ〜んぶ一緒になったもの。今の時代、アレルギー対応や苦手な果物や食材など、お客様のニーズに合わせてアレンジすることも必要。ショーウインドーに飾られているスイーツと異なり、アシェット・デセールはその場でリクエストに応えてくれるから、ニーズに対して柔軟性がある。

「アシェット・デセールはコース料理で提供することが多いです。デザートはコース全体の中のひとつですから、コースとの一体感も求められます。また、デザートの認識としてスイーツ盛り合わせがほとんどですから(苦笑)、その場で仕上げていくアシェット・デセールとなると認知度はまだ低いのではないでしょうか。そんな状況ですですから、アシェット・デセールを単体で意識することは少ないかもしれませんし、これだけを求めてっていうのも機会がほとんどないと思います」

食べたことがないと、何それ?である。

 

学生の時から計画的に技術を学んでいく

「専門学校の時から夢描いていました。スイーツ専門店ではなく、アシェット・デセール専門店です。レシピはあっても、お皿の上に表現する芸術性とか、自分が思っている世界観を表現できることが理想でした。アシェット・デセールはまさにドンピシャだったんです」

塚本さんは専門学校卒業後、菓子製造の基礎的な技術とホテルの格式を学ぶため妙高にある老舗へ。洋菓子、焼菓子、クラシカルホテルのデザート、ウエディングケーキなど、大量生産することやオーダーに応じたスイーツ作りを通して、総合的な対応力を身に付けた。今度は応用力を備えるために新潟市内のレストランへ。専属パティシエとして新メニューの開発も担当しつつ、売上管理や仕入先とのやり取り、スタッフへの指導など、マネジメントにも携わった。

 

独立を決めて、動いてわかったこと

塚本さんはすでに動いていた。ずっと物件を探していて、ようやく理想の空き物件を見つけた。

「事業計画書を作っていくと準備が必要なことが見えてきて、優先順位を付けながら進めていきました。働きながら独立準備って難しいと多いますが、独立する人ってみんなそんな感じだと思いますし、自分の夢が叶うわけですから頑張りますよね。自然とやる気が湧いてきます。と思っていたら、物件交渉中に連絡が取れなくなってしまって。そんなことって……ちょっと驚いています」


物件はご縁、本当にそう思う。優先的に商談していたと思ったら「実は先に商談がありまして」なんて言われたり、契約しようと思ったら想定外の資料提出を求められたり、契約期限を迫られたり、そういうものである。だからと言って手を止めるわけにはいかず、次なる物件を探さなければならない。だが、場所が変わるということはマーケティングも変化させていく必要がある。時々、立地環境の影響を受けずに繁盛しているお店を見たことはないだろうか。住宅街に佇むひっそりとした場所にポツンと。お店にはいると満席!だったり。そんなお店は最初からそうなっているワケではなく、また、偶然の出来事でもなく、用意周到にブランディングを行い、ちゃんとマーケティングしているワケである。よくビジネス上のフレームワーク「5A」「3C」「4P」「SWOT」「STP」「5FORCE」に当てはめて事業計画を考えたり、新規事業や既存事業を分析したりするが、総じてそのような環境下で繁盛している経営者の頭の中は、もうあちこちと考えが及んでフル回転。言葉では説明しにくい現象が起きている!?と思っている。


「ある人から紹介してもらいました。最初に探していた場所と環境がまったく異なっていますが、自分が描いているお店の雰囲気的にはこっちの方が合っていると感じました。とは言いつつも、不安はありますよ。本当にお客さんは来てくれるのだろうかと。いろいろな戦略も考えていますが、まずは資金調達、物件の契約、内装工事と、1つひとつやっていきます」

関わっていく人が多くなると、考え方も変わってくる。いい意味で進化していると言えるだろう。

 

期待を寄せるアシェット・デセール専門店

『Dessert salon ete』は、塚本さんの名前から。メニューの軸はドリンク付きのアシェット・デセールと、季節のものも検討している。ソフトドリンクだけでなく、ワインといった相性のいいお酒も。また、カウンターから塚本さんの仕事や一皿に盛り付けていく様子が見えるようオープンキッチンスタイル。ただ作るだけでなく、表現者としてのパティシエも見てほしいという。すべてはアシェット・デセールの魅力を余すことなく体感するためにある。

「音とか香りとか、仕上げられていくプロセスも魅力ですので、そうしたシーンも食の記憶として大切だと思います。と立派なことに聞こえますが、SNS狙いです(笑)」

笹出線から一本中へ入った住宅地手前の、公共施設、パン屋、サイクルショップ、美容室が立ち並ぶ場所にお店はある。きちんと情報戦略を考えていけば通ってくれるファンが増えそうな予感がする。

「その情報戦略、やること山盛りでして。話を聞けば聞くほど何からすればいいのか頭が真っ白になっていきます。どれも大切なことはわかっていますが、初期段階で何を準備しておくか、頭の中を整理して取り組んでいきたいと思います」

アシェット・デセールをお店で提供するだけでは将来的に経営の不安要素も出てくるかもしれない。そのため、今のうちから焼菓子もスタートさせ、ブランド化したいという。

「もちろん、アシェット・デセールを楽しんだお客様にも買っていただきたいですし、この先はECやセレクトショップにも取り扱っていただきたいですし。生産体制は今までの職場で把握していますから、不安なことはそんなにありません。夢はどんどん広がっていきます」

美味しいものを、美味しく提供したい。

パティシエとしての塚本さんの調理技術は、

素材以上の美味しい感動をもたらしてくれる。

 

塚本夏輝さん

調理・製菓の専門学校卒業後、『赤倉観光ホテル』にてベーカリー所属。洋菓子、焼菓子、ホテルデザート、ウェディングなどを経験。その後、新潟駅前の『シャレルランデヴー』専属パティシエに。新メニューの開発のほかマネジメントにも携わる。2022年夏、独立。

Dessert salon ete(デセール・サロン・エテ)
住所:新潟市中央区新和3-2-17 STAGE A2
連絡先:025-377-7425
営業時間:14時~20時
定休日:木曜
Instagram

 

>関連記事

予想外のひとコトQ&A

私のコトバ

 

promocarrie