「トレンドの曲に合わせて、楽しくエクササイズします。1曲1曲にどの筋肉を刺激してどういう運動をするか決まっていて、音楽も運動も常に最新バージョンにアップデートしていきますから、誰でも簡単で気軽にエクササイズを楽しめると思います」

ゴツい、というか重心がどっしりとしているというか、力強いというか。動いて止まる、という基本動作にブレはなく、かつ、速い。それもそのはず、横濱さんは空手の日本代表選手であり、世界一に輝いたアスリートである。筋肉それぞれがムッキムキでTシャツの袖はゴツい腕でピチッとしている。筋トレ一本と思いきや、そんなことはない。全国展開をしているスポーツクラブではエクササイズのトレーナーとして活躍していたこともある。聞けば聞くほど輝かしい経歴をお持ちの横濱さんに、いろいろと話を聞いていこう。

「そんなに面白い話、ないですよ〜」

 

強烈な大学時代から世界一になるまで

横濱さんは日本体育大学出身。出身校を聞いただけで身体能力とその道の極め方と言ったら半端ではない。日体大といえば日本代表に選ばれることはほぼ当たり前で、世界ナンバーワンを見据えた肉体的に極限まで研ぎ澄まされるエリートなカリキュラムである。柔軟かつ瞬発力に富み、かつ、一瞬のうちにして最大出力まで可能にする超刺激的な筋肉レッスン。そんな環境に横濱さんはいた。
「ハードな毎日でした(笑)」


空手家の世界は厳しい。礼儀、規律、普段の生活まで。『公益財団法人 全日本空手道連盟』によると、空手のしきたりは『財団法人全日本空手道連盟空手道憲章』に第一条から第六条まで定められている。
なかでも第一条と第二条は威厳漂う内容だ。

 

第一条(目的)
空手道は、日々の心身の練磨を通じて強靭な身体を鍛え、人格を陶冶し、心身ともに有為な人物を育成することを目的とする。

第二条(心構え)
空手道の修行を志す者は、空手道の品位と威厳を保つため、礼節、正義感、道徳心、克己、勇気からなる資質(倫理的規範)の涵養に努めなければならない。

引用:公益財団法人 全日本空手道連盟ホームページ・空手道憲章

 

社会人になると、横濱さんは日本代表に選出され、数々の世界試合に参加。アメリカで行われた試合では勝ち続けなんと世界一!頂点に立った。他の試合においても優勝を重ね、まさに空手界トップクラス入りというか空手家のエリートというか、横濱さんはピラミッドでいうところの上に存在となった。また、選手活動と同時に、若手の育成のために指導者としての側面も持ち始める。


「社会人になってからも、高校生や大人向けに空手指導はやっています。昔は、公的機関が行っている家族向けの運動スクールも行ったり、いろいろ担当させていただきました」
空手家としてのバックボーンは、それはそれは強靭で、誰もが驚く功績もあり、空手一本でも食べていけるのではないかと感じてしまう。だが、横濱さんの社会人生活も、空手同様のサプライズストーリーがある!横濱さん、すごいです。


「ほんと、面白い話ないですって」

 

インストラクター頂点に!横濱さん、センターに立つ

横濱さんのもうひとつの顔が社会人。大学卒業後は全国展開をしているスポーツクラブに入社。当時は今ほどトレーニング市場が盛んではなく、ジム=筋トレ系が多い時代だった。フィットネスクラブというと世界最大級の『ゴールドジム』が代表的。ロゴからして重いものを持つムキムキの人たちを思い浮かべる人も少なくないはずだ。また、公共体育施設にはマシーンが置かれ、会員制のフィットネスジムにはプールがあったりエアロビクスがあったり。実に多彩な広がりで展開していく市場の中、横濱さんに社長からとあるミッションを任された。


「スタジオ事業を新規に立ち上げて市場をにぎるという、かなりハードルの高いミッションでした。なにせノウハウがない。筋トレブームもあり、スタジオよりマシーン利用のお客様がたくさんいました。そんな中でスタジオ事業をどうすればいいのか、結果を出すには何を知ればいいのか、わからないことだらけでした」
新規事業を立ち上げる難しさは筆者も承知。戦略を考え、小さく始めて検証し、テストをしたりモニター調査をしたり、360度視点を持ってあらゆる角度で事業を発展させていく。答えのない中で走り続けないといけない大変さというか辛さというか、プレッシャといったらハンパないはず。だが、そこら辺は世界一の横濱さんだけに、いろいろなことが起きても着実に乗り越えていく。


「インストラクター養成チームというものがあり、最終的には他社や全国各地へ羽ばたいていった仲間を含めると7,000人ほど指導しました。もちろん、指導する側に必要なライセンスもすべて取得し、日々進化していくレッスン内容を取り入れ、1つひとつ取り組み、成長させていきました。また、レズミルズという世界で一番メジャーなプログラムを導入し、事業はどんどん伸びていきました。そんなレズミルズで2014年に人気インストラクター投票がありまして、恥ずかしながら私が日本一、つまりインストラクターのトップになったんです」


どういうことかというと、アイドルグループのセンターということである。横濱さんは幕張メッセで行われた記念イベントで、生徒約7,000名に対してステージ上の数十名いるインストラクターのセンターに立っていた。そんな横濱さんに全国各地のスポーツクラブからイベント出演の依頼が次々と来る。空手で世界一になった時と同じようなのスポットライトの当たり方だった。

 

経験を活かしつつ進化させた“通いたくなるジム”

人生は分からないもので、頂点に立てば下がることもあるし、その場に立ち続けることもある。また、自分では予期せぬ異次元へ突入することも。横濱さんに起きたのは、所属していたスポーツクラブの閉鎖だった。新たに自身の目指すべきポジションを設定する必要があった。だが、横濱さんに不安というコトバは微塵もない。


「パーソナルトレーニングジムへ転職し、経営のノウハウなどを学ばせていただきました。空手の活動も継続しながら、独立・起業への思いも強くなってきました。また、全国各地にいる後輩たちから復帰を望む嬉しい声が届いたり、公共施設でのスクール講師をしたり。今までの経験をさらに磨きつつ、動きながら考えることの大切さを感じている毎日です」
物件候補を探しながら、以前取得していたライセンス「レズミルズ」の復帰とサービス展開、利用者目線での必要な設備の検討、そして、どんなジムにしていくかコンセプトを考えていった。物件が絞り込まれていくと、現地を見ながらプランを描き、1つひとつ詰めていった。また、新規事業を立ち上げて結果を出してきた経験を持っているだけに、市場の動きやニーズやトレンドの先読み。どの部分で攻めていけるか冷静に分析した。


「最先端の動きや業界動向はいつもチェックしています。今はパーソナルトレーニングジムが増えてきて、体を鍛えることに+αの概念が加わってきました。ピラティスやヨガ、アスリート向け、体質改善など、ニーズに合わせた工夫がされています。地域の特性とマーケティングを考えながら、私ができることと、ありそうでなかった要素を加えてコンセプトを考えました」
横濱さんのジムは新潟市中央区西堀通にある。幕張メッセの規模ではないけれど、センターに立って指導しているのは紛れもない世界一の横濱さん。新たな物語が、ここでも始まろうとしている。

 

 

横濱さん、ここ最近運動不足で…。

体が追いつかない!なんて思うことも多くなり…。

ご指導いただけますでしょうか。

「先日、空手道の4大流派の一つの空手道糸東会の全国大会・シニア組手の部で優勝したんですよ。空手もやってみます?」

いやいやいや~ちょっと…それはちょっと!

 

 

横濱誠さん

日本体育大学卒業後、株式会社ピープル(現コナミスポーツクラブ)入社。スタジオインストラクター養成チームでは延べ7,000人ほど指導。ジムに所属しながら新潟高校空手部監督に就任。その後、新潟市内のパーソナルジムに移籍。経営のいろはを習得しつつ、2022年12月独立・開業。

パーソナルスタジオYOKOHAMA
住所:新潟市中央区西堀通2-77西堀シャルム102
営業時間:7時〜22時

 

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