「人も犬も気持ちは一緒。キレイになれば笑顔になるし、飼い主の気持ちも明るくなります。散歩していても、家にいても、健康が一番です。私たち(牛田さんと稲月さん)は動物病院での経験があるため、トリミングをしながら健康状態をチェックしています。つまり、毛並みを整えて色艶ともに美しく仕上げていくのはマストで、犬の体に触れながら髪質や肌、目つきや動きなどを観察しながら犬それぞれの体調も見ているんですよ」

新潟県の犬の新規登録数は毎年約2,000頭減少傾向にあり、全国規模で見れば年々約10万頭減少している(出典:厚生労働省 都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等平成26年度~令和2年度)。絶対数として減少しているものの、コロナ禍においてペット産業は絶好調。ペット・ペット用品は2015年の市場規模が約2,400億円強だったのに対し2021年には約2,800億円強まで伸びている。家計におけるペット支出額も増!ペット専用のクリニックの診察も増!!車で町を走れば新しいトリミングサロンや動物病院も目に入ってくるし、公園を歩けば凛々しくもオシャレをした犬と会う。ホームセンターに行けば可愛い犬や猫を見て癒される〜!という具合に、私も飼いたいなぁと思ってくる。だが、増え続けているからこそ、表に出てこない課題もある。

「トリミングサロンも動物病院も店舗・施設数が限られていて、予約が取れなかったり、予約が取れてもだいぶ先だったりしています。市街地から離れると深刻な状況で、お店や施設がなかったり…。需要と供給のバランスがおかしいことになっているのが現状です」

 

犬のこと、飼い主のこと、いろいろ思って独立した私たち

牛田さんは動物病院勤務の経験を持つ。院長の右腕として経営に関することから患者の対応、新人教育まで、ほぼすべての業務を担当していた。新規事業として立ち上げたトリミング部門も主導。動物病院とトリミングをワンストップで提供できる仕組みを作った。

「独立しようと決意したのは、行き場のない犬が想像以上に多いことでした。いろいろな事情があって行けないのは致し方ない、とはいっても悲しい現実をなんとか変えていきたくて。行ける場所を増やせば、少しでも多くの犬が救われると思いました。もちろん、飼い主にとっても、です」

キャリア25年以上の牛田さんは業界全体を俯瞰して見ている。各地域の動物病院だけでなくトリミングサロンの商圏、飼い主や犬種なども地域の傾向などを把握している。また、犬種にもトレンドがあるようで、小型犬が一気に増えたり、一方、大型犬が少なくなったり、そんな動きも見ている。

「ドラマとか有名人の愛犬とか、流行ってあるんですよ。某CMでチワワが起用されて一気に増えたり、ラブラドールが急増したり。今はほんとたくさんの犬種がいますよね。しかし、悲しいことに流行が落ち着いてしまうと保護される犬種が増えたりします。飼いきれないのか、飽きてしまったのか、要因はいろいろあると思いますが…」

また、トリミングサロンには年齢制限や受け入れられる条件もあったりする。老犬や障害を持った犬だ。理由は明白、そうした犬の扱いには特別なケアが必要だからだ。

「犬種それぞれ性格も違いますし、しつけの仕方によっても動きをコントロールできるかどうか異なります。で、大型犬から小型犬までいますから、扱い方が大変なんですね。また、障害を持っていたり、老犬となると、注意を払いながらトリミングしないといけませんし、飼い主の愛犬への思いもあります。サービスを提供する私たちには当然ながら責任がありますから、受け入れる体制も慎重にならざるを得ません。こうした悩みや不安要素を解消したいですよね」

 

半年以上も!! あれやこれやとトラブル続出だった物件探し

サロンのネーミングは牛田さんの愛猫の名前から。同じ職場で働いていた稲月さんもスタッフとして加わる。やりたいこと、目指している方向、世界観の共有など、二人の間で共有されていて、阿吽の呼吸で物事が進められていく。外観や内装、メニュー内容やプライシングもすんなりと決まった。肝心かなめの資金調達についてもあらかじめ準備をしていたから安心だ。すべての物事がスムーズに進んでいたかに思えたが、物件だけは想像以上に苦労した。

「商談が難航したり、トラブルが起きたり、売地となって問い合わせても無反応だったり。探し始めて半年以上、いやいや、もっと経過していますね。こんなに大変だと思わなかったですし、大変というよりは途方に暮れていたというか…。次こそ!と思っても、全然話が進まなくて。皆さん、こんな感じなんですかね?」

物件探しのファーストステップはネット検索だろうか。その後、望むエリアにある不動産会社に訪問したり、知人友人に聞いたり、場合によっては公的機関の入札だったり。探し方は人それぞれだと思うが、意外とヒントになるのが歩いて探すこと。知っている土地であっても、歩いて初めてわかることがある。近所の人との立ち話もあるだろうし、商店街だったら実情を教えてくれるかもしれない。いずれにせよ、歩いて目で見て感じることが理想の物件との出会いにつながる、と信じている。

「最終的には主人の知人経由で見つけてもらった物件にまとまりそうです。時間はかかりましたが、納得の土地で決めることができました」

 

すべては犬と飼い主のために。夢はどんどん広がっていく

なんといっても日当たりがいい。HIKARUと名付けられたサロンは、牛田さんも稲月さんも笑顔あふれる。愛犬を連れてくる飼い主も、犬もみんなニコニコだ。

「テラスも作りたいし、ドッグランもあると便利ですし、トリミング中にコーヒーが飲めたり、散歩がてら愛犬と軽食が楽しめたり、やりたいと思うことがたくさんあります。もちろん、障害を抱えていたり、老犬であったり、トリミングサロンへ行く機会が少なかった犬も受け入れて行きます」

秋葉区エリアには頭数に対してトリミングサロンや動物病院が少ない。冒頭で述べた通り、絶対数が少ないため利用したくても予約で埋まっていることがある。とはいっても、他のエリアまで足を延ばして行くかというとおっくうである。そして、犬の具合が悪くなればすぐ病院へ連れて行きたいし、定期的にキレイになりたい・してあげたいと思っている飼い主がほとんどだろう。

「トリミングしながら健康状態だけでなく、しつけ指導や飼い主たちが気になる部分も応えられる範囲でベストを尽くしたいです。私たちは病院での経験やトリマーの資格などを持っているので、ワンストップで幅広く対応できると思います。本格的な治療が必要であれば医師と連絡を取ったりしますし、そうした業界内の連携を行っていきたいです」

牛田さんと稲月さんは犬と話ができているのでしょう。

トリミングしながら、体を触れながら、

コトバはなくても犬の瞳が語っている。

牛田さんと稲月さんは今日もうんうんと頷きながら、

犬と、飼い主と向き合っている。

2022年師走。空には雪が舞い、北風が吹き始めた新潟の冬。

HIKARUはオープンした。

 

 

牛田千春さん

新潟市秋葉区にある江口動物病院にて主任を務め、経営における一連の業務に携わる。新規事業としてトリミング部門を立ち上げた。より手厚いワンストップサービスの確立と、愛犬とのかかわり方、地域課題解決を目指して独立。

 

稲月愛里さん

ペット関連の専門学校卒業後、牛田さんの勤務先である新潟市秋葉区にある江口動物病院に就職。犬だけでなく猫も対応。特に、神経質な犬や猫に対しての接し方に長けている。趣味はライブに行く事で、BUMP OF CHICKENの熱狂的ファン。

DOG SALON HIKARU
住所:新潟市秋葉区北上2-61-35
連絡先:0250-23-2232
営業時間:9時~(日曜・祝日・ほか不定休)
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