指が岩に引っかかれば、とにかく上へ。どんな角度でも手が伸びなくても、足が引っ掛からなくても、飛んで掴む!ボルダリングはクライミングの一種で、岩や壁面を登る競技。すご~く高い岩を登ることもあれば、低い岩を登ることもある。子供の遊び場や公共施設において、壁一面にホールドが付けられている光景を目にしたことはないだろうか。「これって無理でしょ!」なんて感じるかもしれませんが、私も実際のところキツイです(泣)掴んだはいいものの、次はどこへ移動するのか…どうやって足を延ばすのか…あぁ体が硬いから股関節が痛いし…とネガティブになってしまう。世界大会なんか見ると驚愕!なんという速さなんだと、ただただ驚くのであった。

「子供たちも楽しく登っていますよ!頂上まで登った時の達成感は最高です」

古俣さんがボルダリングと出会ったのは社会人一年。自身の言葉ではこう振り返る。

 

~社会人生活1年目の2009年にボルダリング(クライミング)に出会って以来、その世界にどっぷりとハマる。ストレス漬けの日々の中にボルダリングが入り込むことで生活が一変し人生が豊かになった~

 

~「集団行動」を伴わなくても1人で気軽にできる珍しいスポーツがボルダリング。「スポーツがしたいのに一緒にやる仲間がいない、友達と時間を合わせられない」という社会人に、家と職場以外の『居場所』(サードプレイス)を提供したい~

古俣さんの事業計画書より

 

癒しとしてのポジションにあったボルダリング。趣味が高じてではないけれど、夢中になっていった結果、古俣さんは転職。アウトドア関連の会社に入社し、クライミングジムを担当。3年後には店長に就任した。まさに天職に就いたのである。

 

子供も大人も「壁」に魅せられる人たちが続出している!?

日本山岳・スポーツクライミング協会によると競技人口は2020年で約60万人、ボルダリングジムは約500軒で年々増加。データの推移を見ると驚くほどの急激な伸び!それもそのはず、国際大会や日本国内においても競技が活発化し、子供たちも気軽にできることから人気のあるスポーツに成長した。


「これだけ人気が高まってきても、新潟市内では練習できる環境はまだまだ整っていません。東区、江南区、西区にそれぞれ1店舗ありますが、そのうちの1店舗を私が受け継ぐ感じとなり…新潟市内で3店舗だけです。登山ブームってあったじゃないですか!山に登る楽しさを満喫したら、ぜひ“岩”とか“壁”とかにも興味を持っていただき、登ってほしいです(笑)」


ただ知らなかっただけなのか、たまたま縁がなかっただけなのか。とあるジムに行く機会がありちらっと見たところ…それはそれは子供たちで大にぎわい!子供だけでなく、大人の姿もあって、みんな壁に張りついていた。登る人と下からアドバイスをする人の掛け合いがあったり、じっくりと考えながら
黙々と登っていたり。なんだか楽しそう。


「意外と人が多いなって感じました?そうなんですよ、会員制度とかビジター向けだったり、ジムによっていろいろなシステムがあります。ただ実態をあまり知られていないと思うので、施設も空いていると思われがちですね。ですが…なんですよ!」

 

必然だったかもしれない独立のタイミング

店長業務としての満足感、プライベートの充足感、そして、将来的な見通し。いい意味で満たされていた日々の中、古俣さんに変革のタイミングが突然やってきた。どうしよう…と悩んだようだけど、決断に至ったのはいろいろな視点で考えて、考えて、考えた末に…であった。

「新潟市内のボルダリング施設ってほんと限られていますし、競技人口に対して施設が少ないんです。そんな状況ですから、『新潟でボルダリングができる場所ってなさそう』という先入観を変えていかないといけませんし、いかに知ってもらうかが大切ですよね」

西区の施設を引き継ぐにしても、新潟市内のトータル施設数に変化はないわけで…そもそもボルダリングを知ってもらわないといけない。

「事業計画書を作っていく上で今一度、業界をリサーチしたり、新潟での市場を見つめ直したり、フラットな視点で考えていきました。やはりボルダリングってまだまだマイナーなスポーツですよね(笑)たまたま私の周りにはマニアックな人たちや愛好家が集まっていますし、認知度の高さも相当なもんだろうと思っていました。いい意味で勘違いですよね。いやいや、いい意味でもないか(笑)」

古俣さんはWEBデザイナーやポスターデザイン、DTPオペレーターなど、クリエイティブ系の職歴を持つ。クライアントのオーダーにいかに応えるか、どういうデザインで、どんな表現だとお客様やユーザーに響くのか、ということに対してずっと考え続けてきた職人だ。そのため、ボルダリングが置かれた状況において古俣さんのスキルは十分に発揮されるはず!いかに自分の施設を知ってもらえるか、どうしたらボルダリングというスポーツがより知ってもらえるか、という意識で取り組めばいい、ということになる。集客の戦略や利益を考えたシミュレーションにおいても、店長経験というマネジメント力が役に立つはずだ!

「コンセプト、強み、見せ方、キャッシュフローなど、自分自身のお店の計画はもちろん、他施設との違いや差別化など、マーケに関する視点での計画書作りはスムーズでしたし、WEBサイトもワイヤーまで簡単だったり、今までの経験が大いに役立ちました。資金調達の場面においても、求められる資料を事前に準備できていたのでスムーズだったんですよ!」

 

コトバの裏にある行動力と努力の積み重ねが今につながっている

古俣さんと初めて会ったときは「いつか独立したいと思っていて、大体2~3年後、その先でしょうか」と話していたが、突然の出来事が起きたことで着想からあっという間に開業することとなった。2023年4月、新潟市西区に古俣さんのボルダリングジム「FRICTION FREAKS」は誕生した。

「まさかこんなに早く独立するなんて、自分でも驚きました。急に予定が早まったとしても、それなりに準備をしてきましたから焦ることはありませんでした。いろいろな活動をしていると、人とのつながりがどんどん広がっていって、予定が早まったとしてもちゃんと着地しました。ご縁に感謝です」

Instagram、Twitter、ホームページと、それぞれの内容を見ると先ほどの通り、今までの経験が存分に生かされていることが伝わってくる。また、どこか堂々としている雰囲気を感じるのは気のせいだろうか。そういえば、古俣さんは多くは語らず行動で示すタイプだった。

「ただ考えて、手を動かしているだけです(笑)とは言いつつも、ちゃんと計画を立てて、ToDoも作って、当たり前のことを人よりもちょっと多く、早くしているかもしれませんね」

ジムに入ると、ボルダリングの壁が印象的で、角度もさまざまに設計されている。ビギナーからプロレベルまで対応していて、ホールドの位置は定期的にアップデートされるという。そして、小学生向けのスクールは引き継いだ会員を中心に、早くも多くの親たちから注目を集めている。すべては準備をしっかりしてきた結果だ。

「ボルダリングは、次はどこを掴んで、どう登っていくか考えないといけないし、想像力が求められるスポーツです。興味ない!なんて言わずにまずは掴みにきてみてください(笑)きっと、ハマるはずです」

 

高くても、低くても、登り切った達成感を求めて、
今日も古俣さんは壁にビタッと張り付いている。

一連の動きに無駄はなく、次の一手は必ず頂につながっている。
いち早く先を読み、誰よりも着実に、一歩ずつ。

「何度も言いますが、ボルダリング、いいんですよ〜。
どういいかって、掴めば分かりますって!」

ちょっと…自分の体重を支えられる自信がなくて…。
次の一手すら手が伸びなくて…。
まずは気持ちから、である。

 

古俣賢人さん

社会人生活1年目にボルダリング(クライミング)と出会いのめり込むことに。印刷会社とアウトドアショップを経て、2023年独立。新潟市西区に「FRICTION FREAKS」を開業。

ボルダリングジム FRICTION FREAKS
新潟市西区槇尾108-2
13時~22時30分、土・日曜・祝日11時~20時※木曜休み
Instagram
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