「そろそろ独立かなって。人生いろいろじゃないですか。潮目って言うんですかね。歳を重ねると人との付き合い方も考えていかないといけないし。えぇ、もちろんお客様のコトが第一ですよ」

瞳の奥に見え隠れする今まで歩んできた苦労、喜び。心が消費され、老いを感じ、取れない疲れが蓄積されていく日々。望月さんが背負っているモノ・コトはとっても重そうだ。だが、独立の話となると表情が一変。一筋の光が差し込み、その光を目指してがむしゃらに走っている、そんな前向きな気持ちがある。

「なんとかしないと、って常日頃思うんですけど、独立するための場所=物件が見つからないんです。理想の坪数、お客様の行きやすい場所は見えているんですが…ほんとない。気持ちだけが焦りますよね」

用意周到な望月さんは、いつまでに何をするかある程度、心の中で決めている。だが、動き出すと周囲との動きが合わず、不安に陥ってしまうという。

「独立のタイミング、相当悩みました。顧客の皆さんにどう伝えればいいのか、オーナーにちゃんと意思を伝えるコトができるのか、そして物件とか自分のお店のコト。ひとつが解決したと思ったらまた新たな壁が立っていて、乗り越えても乗り越えても壁があって、その壁はどんどん高くなっていく…。進み始めると一気にドライブがかかるんですけど…」

そんな日々に変化が起きつつあった。新潟県信用保証協会、新潟市の起業支援をしている新潟IPC財団に訪れた日から、ぼんやりしていた行き先がはっきりと、輪郭が描かれていった。

「お金のプロ、起業支援のプロにお話を聞いてから、独立後のイメージはだんだんと明確になっていきました。この先、大丈夫だ!と自信につながっていきました」

とはいうものの…新たなハプニングが起きようとしていた。2023年師走の話である。

 

2024年如月、お店の場所をどうするのか、の巻

「先ほどのお話通り、物件がねぇ。いいな、と思っていたら別の人が仮契約していたり、理想の場所を探してみるも見つからない。自宅から近くて、お客様が通いやすいバス通り沿いで、小ぢんまりとしたサロン、ないんですねぇ」

物件はご縁と言われる通り、不動産屋さんを訪ねても、街を歩いてみても、知人友人に聞いてみても…ない!とのこと。待っていても出てくる兆しはなく、自分から探しにいっても状況は変わらない。そんな日々がしばらく続き、独立したくてもできない→この先どうなるのか→夢で終わってしまうのか→も〜〜〜〜〜×100、である。そんな中、久しぶりに望月さんに会ったら大きく状況が変わっていた。

「ご縁なんです(笑)これ、本当でした。探しているエリアを変えなきゃいけないのかなって思っていた時に、まさかの出会い!これで一歩前に進めると!それはそれは、気分が上がりましたよ」

決まった物件は、理想の三大要素「①自宅からすぐ ②バス停からもすぐ ③小ぢんまり」がすべて含まれていた。物件の次は資金調達。事前に新潟県信用保証協会と話をしていたため、スムーズに進むのかと思ったらまた壁が現れた。

「分からないですよね、お店をやったコトないですし。毎月、どこにいくら掛かるのかって計画を作ろうと思っても、一体いくら掛かるのか分からない!知人友人に聞きながら、少しずつ前に進めていきました…が!今度はお客さん。本当にお店に来てくれるのだろうか…と考えるほど不安。皆さんはどうやっているんでしょうか。しっかりと営業してるんでしょうね。どうしよう、私」

再び、途方に暮れつつある望月さんではあったが、今度は大丈夫。メモを取りながらやるコトを整理し、優先順位をつけて、1つ1つ進めていった。

だが、この先またハプニングが起きようとしていた。2024年如月の話である。

 

2024年卯月、体調不良により負の連鎖が続きそう、の巻

「インフルエンザです。この体調不良はスケジュールにも大きく影響があって、その後も調子が良くなく…勤務先だったオーナーにも迷惑をかけられないし、思うように進められない状態が続きました」

体調不良だけでなく、物件でも調整しなければならない事情が生じて、自分一人では解決できないコトが増えていった。目の前にあるコトだけでも時間がかかる上、今の状況を、時間を止めるコトもできないため…一時期は八方塞がりに(泣)ネガティブな連鎖は続いていくが…時の流れに身を委ねる日々になっていく。

「関係する人が増えるほど、物事って進まないものなんですね。自分だけでは解決できないコトってこんなにあったんだ!って。ごく当たり前のコトなんですけど、そういった状況を飲み込めていない自分を、ある意味で冷静に見れた時間でもありました」

望月さんの思いは日に日にアツくなると、時間が解決してくれるコトも見えてきた。いかに自分自身をコントロールして気持ちを落ち着かせていくか、そのコトに気がついてきた。

「ちょっと大人になったんですよ(笑)」

 

2024年水無月、ついに旅立つ時が来たけれど…また…の巻

「肺炎です。今までの体調不良は子どもからと言っていいほど!も〜なんですが…、ドクターからは奇跡的にピークを超えていて入院しなくてもいいと言われ、ちょっとホッとしました」

とは言うものの、体調不良は次から次へと望月さんの体に襲いかかり、肺炎となったら大病!体力も気力も消耗されていく。この状態はオープン前の2〜3週間の話であった。

「お店の着工時にもいろいろ起きましたし、工事が進んでいる最中もあれこれと。なんでこんな事態になるのか…なんで私ばかりが!と思わないようにして頑張ってます(笑)」

このままトラブル続きと思いきや1つひとつ着実に解決していき、目標であった6月1日!ついにオープンした。

「まるで子どもを産んだ時のような感動がありました。お店をしている経営者の皆さんはこのような体験をしているのでしょうか。今は感無量です。とは言うものの、やることは山盛り、と言うことは自覚しています。とにかく今は体調を整えるコトが最優先です」

夢のサロンがついにオープン。2024年水無月の話である。


いろいろありました。
本当にお店を出せるのか、
独立することはできるのか、
迷子になった時もありました。

とにかく不運続き、と思ってしまいますが、
その不運ってたまたまであって、見る角度を変えれば、
旅立つため、羽ばたいていくための準備だったりする。

オープンして1カ月。望月さんと久々に会ったら表情も変わっていた。
「もうピリピリしてません」

そして意外な変化も起きていた。
「初めて息子の髪を切って、一緒にご飯食べて、ゆっくり過ごせました。この当たり前のコトができていなかったんだと思うと、独立して本当によかったです」


大切なコトって、
実は目の前にあって見えないだけだった、ってよくある。
今はしっかり見えているんだから、
もう安心、大丈夫ですね、望月さん!

 

望月美香子さん

新潟市出身。新潟市内にある結婚式場の衣装・ヘアメイクで経験を積み、万代エリアにあるサロンに入社。接客や技術的なスキルを磨きながら着実に顧客に愛されるスタイリストに。2024年6月、念願だった自身のサロン『Lifestyle Sorahair』をオープンした。

Lifestyle Sora hair
新潟市東区山木戸7-4-17
9時~18時 月曜休

 

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