柔脳(やわらのう)というメソッドがある。頭蓋骨から背中、仙骨にかけて施術されるメソッドで、整骨院・接骨院のようなものでもなく、カイロプラクティックでもなく、もみほぐし、ツボ押し、鍼灸でもない。ただ首の後ろから後頭部にかけてそっと手を添えるだけ。はい?であるが、そういうことのようだ。ハンドパワーの如く手から摩訶不思議なパワーが出ているのか。それとも、超人的なテクニックなのか。施術を受けている人たちのコメントを見ると、じんわりと患部がストレッチしていき、頭痛が和らぐとのこと。ほんと?と思うが、そういうことである。

「私自身がずっと偏頭痛に悩んでいて、ほんと辛かったんです。季節や環境の変化、仕事上のことなど、偏頭痛が生じるタイミングはいつどこにでもありました。いろいろな施術を試しましたが、その瞬間は痛みが解放されても、すぐ辛さが戻ってしまう。根本的に治すにはどうすればいいのか困り果てていたときに!柔脳と出会ったんです」

まだ知られていないメソッドだが、じわじわと口コミの効果で利用者が増えている柔脳。新潟では師匠と佐々木さん含め5名(2022年5月現在)のみというから、レアなメソッドである。当然ながら、レアだからこそ事業を続けるには苦難の道。ゼロイチのクリエイティブに通じるものがある。

「改善する!と言っても、そもそも知られていないメソッドなので説明が難しい。体感してもらえば少しでも感じていただけますが、このコロナ禍において体験会とか、触れることいつもどおりにいかないこともあります。ソーシャルメディアで投稿を続けていても、伝わるように表現しても、あの手この手を尽くしても、予約いただくまでのプロセスは相当ハードルが高いんです」

 

流れのままに開業したのはいいけれど…

佐々木さんは国家資格である言語聴覚士を持つ。今までデイサービス施設やリハビリセンターなどで言語障害や高次脳機能障害などのリハビリを担当してきた。2020年に柔脳インストラクターを取得。自身の歩むべき道が見えた。

「長年悩まされてきた偏頭痛が和ら経験を多くの人に伝えて行きたくて開業を決意しました。知人経由で美容室を間借りして、いい意味で勢いよく立ち上げました。インスタに投稿して、チラシを作ったり、LINE公式で予約を受けたり、自分では開業準備としてはパーフェクトだと思っていたんですね。振り返れば…もっと調べて、段取りを聞いておけば良かったです」

開業届を出したはいいけど青色申告を忘れてしまった。資金調達は必要なかったから事業計画は考えてもいなかった。キャッシュイン/アウト、予約受付管理、お店のマネジメント、情報戦略など、お店を経営しながら少しずつ考えていこうと思っていたかもしれないけど…やっておけば良かったという。

「ネットで少しだけ調べたり、知人に聞いたりして立ち上げたので、起業の見方が偏っていたかもしれません。今からなんとか取り戻そうと、1つ1つ向き合って取り組んでいます」

Webサイトを検索すれば起業の進め方はいくらでも出てくる。資金調達の仕方も、販路開拓も、ノウハウはネット上にいくらでも見つけられる。しかし、情報の見方を間違えると、ボタンの掛け違いを取り戻すには相当な時間を要する。つまり、ネットに書かれた情報が真実であると思い込んでいるからだ。

「事業計画ってなんだろうと(笑)。自己資金だけで開業できたので、疑問を抱くことはなかったと思います。お客さん来ないなぁと思っても来ませんし、情報発信していても予約が入らない。このままだと資金が危険な領域に入ってくると気がつき、行動するように切り替えました。いい教訓でした」

 

春を迎えて変わり始めてきたことがある

柔脳を始めてからお客さんは数十人、売上高はなかなか伸びない。あの手この手と情報戦略は思い浮かぶけど、思うように動けなかった。開業してから時間は経過してしまったけど、失われた時間を取り戻そうと必死に動き始めた佐々木さん。税務署、金融機関、支援機関を訪れては1つ1つ質問をして、ネットで調べものはするけれど自分に必要な情報の見方が備わってきた。時々、見ず知らずの人から営業メッセージに誘惑されたこともあったけど、今はマーケティング視点で判断できるようになってきた。

「なかなか一歩を踏み出せませんでした。それはお客さんも同じで、柔脳ってなんなんだと(笑)。ちょっと引いて自分自身を見つめ直したことで、事業の方向性というか、表現の仕方が変わりました」

4月になって新規客とリピーターが伸びてきた。数カ年の損益計画書を作ったことで目標値が見えた。数カ月の実績でしかないけれど、自信を振り返ることで足元がしっかり見えた。

「利用いただいたお客様にアンケートを行いました。いいところ、悪いところ含め率直にどうですか柔脳?と聞いたところ、本音の回答が多くて(笑)自分を見つめ直すいいきっかけになりました」

メニューの中で利用者の多いものと少ないもの、それにお客様の属性や料金などを掛け合わせ、一定の傾向を分析。利益につながる要素を見極め、強化すべきことを見出した。それは戦略を明確化することでもあった。一人で事業に関わることをすべて行うことは大変。しかし、この分析=PDCAサイクルの運用は事業を行う上では必須。個人事業であっても利益を残していくには向き合わないといけないことだ。

 

幸せってなんだろうと考えていく

少しずつリピータが増えていく。柔脳で偏頭痛に悩まなくなった人も、継続利用で体調変化が起きてきた人も出てきるようになった。効果を実感した人から悩んでいる人へ、口コミも徐々に広がりつつある。

「頭痛だけをピンポイントに治療するのではなく、思考のバランスや心も解き放たれるメンタル面においてもスッキリした!と言っていただけます。柔脳はそうしたアジャストもできるんですよ」

事業の拠点は今、新潟市東区にある。自宅のある新発田からは車で30分ほどだ。この移動時間について、コロナ禍において疑問に思うことがあった。それは家族と一緒に過ごす時間のことだ。

「縁があって東区のお店で事業をやらせてもらっていますが、自宅でも柔脳メソッドを提供したいと思ったんです。営業利益やお店の経営のことは、もちろん生活があるから大切であることは十分理解しています。しかし、この時代において私の事業としてお店を持つことは正解なのかどうか、わからなくなってきました」

新型コロナウイルス感染症はビジネスの仕組みや構造、人の動きも暮らし方も変えてしまった。と同時に、事業も適応していかないと継続・持続はしない。多くのお店が廃業に追い込まれ、家賃が払えない、資金繰りで苦労している経営者が多く出た。そうしたニュースを見ていると、佐々木氏も当然、考えることはある。

「幸せってなんなんだろうと思います。柔脳を広めたいし、家族と一緒に過ごす時間も叶えたい。どちらか選ぶのではなくて、両立できるように事業をフィットさせていく。そういうことって必要ですよね」

偏頭痛で悩んでいたはずが、幸せのあり方を探していた。

心身ともに健康に、とよく言われるけど、

健康でいること自体が幸せであると日々思う。

佐々木さん、まだまだ柔脳はなんだかわからないけど、

心に響くことはよく分かりました。

 

佐々木大輔さん

新潟リハビリテーション専門学校言語聴覚科卒業。新潟市や東京都にあるリハリビ施設にて言語聴覚士として勤務。入院患者のリハビリや障害を持った患者の支援を行う。2021年12月新潟市東区にて『REAL VOICE』開業。

REAL VOICE
新発田市&新潟市東区
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