「新潟に帰ってきました!」と満面の笑みで話す青柳さん。隣に座る奥さんもニコニコ笑顔で「帰ってきましたよぉ」と話す。何回か会っていく中で突然苗字が変わって驚いた。メールアドレスは変わらないけれど宛名が変わっていて、たまたま送ったメールが旧姓だったので青柳さんから「苗字が違います!」と指摘されてハッとした。もしかして、結婚しました?

「あ、お伝え忘れていました!そうなんです、入籍して苗字が変わったんですよ。報告が遅くなって申し訳ありません!」

おふたりのプロフィールから紹介。ご主人の万凛(まりん)さんは栃木県出身、メルボルンにあるベーグルサンドとコーヒーを提供するカフェで働いたこともあった。帰国後は東京都内にある『BitStar(ビットスター)』にて広告プランナーとしてインフルエンサーやコンテンツ・TVCM制作といった分野で活躍。奥様の萌々(もも)さんは新潟県出身、万凛さんのように海外経験もあって、コペンハーゲンにあるデザイン事務所でインターンとしての勤務やカフェでも働いていた。帰国後は誰もが知っているお菓子のグラフィックデザインをしていた。東京駅にある行列ができるお菓子屋さんで、超がつくほどの人気店である。

『株式会社BAKE(ベイク )』という会社です。プレスバターサンドとかチーズケーキのベイクって聞いたことはありませんか?私はBAKE CHEESE TARTのデザインを担当していました。見たコトありません?あると思うんだよなぁ」(萌々さん)

ふたりが作るのはプラントベースのアイス。プラントベースと聞いて「?」だろうか。初耳の人も多いはずで、簡単に説明すると植物由来の原材料を使った食品であり、アイスなワケだから植物由来のアイスってこと。ちなみに、ベジタリアン、ヴィーガンもこの際だから改めて意味を知っておこう。

 

【ベジタリアン】
 ベジタリアン (Vegetarian) という言葉は英国ベジタリアン協会発足の1847年に初めて使われた。ベジタリアンという言葉は「健全な、新鮮な、元気のある」という意味のラテン語 ‘vegetus’ に由来する。

 産業革命で有名なマンチェスターの聖書教会の会員によって、19世紀に肉や魚は食べずに卵や乳類の摂食は本人の選択により、穀物・野菜・豆類などの植物性食品を中心にした食生活を行なう運動が展開された。これがいわゆる近代ベジタリアン運動の始まりである。

「ラクト・オボ・ベジタリアン」は、植物性食品と乳・卵を食べる人たち。牛乳や チーズなどの乳製品のほかに卵も食べるタイプで、欧米のベジタリアンの大半がこのタイプである

引用:NPO法人日本ベジタリアン協会

【ビーガン】
 ビーガニズム (Veganism) は、食用・衣料用・その他の目的のために動物を搾取したり苦しめたりすることを、できる限り止めようとする生き方であると定義することができる。

 ビーガンは動物に苦みを与えることへの嫌悪から、動物の肉(鳥肉・魚肉・その他の魚介類)と卵・乳製品・蜂蜜、動物由来のゼラチン・羊毛脂等を食べず、また動物製品(皮製品・シルク・ウールなど)を身につけたりしない人たち。 

引用:NPO法人日本ベジタリアン協会

で、プラントベースとなると解釈はこうだ。

 

【プラントベース】
近年、多様な消費者の を反映し、動物性原材料ではなく、植物由来の原材料を使用した食品が増えています。プラントベース食品は、このような植物由来の原材料を使用し、畜産物や水産物に似せて作られていることが特徴です。これまでに、大豆や小麦などから、「肉」、「卵」、「ミルク」、「バター」「チーズ」などの代替となる加工食品が製造・販売されています。また、一部の飲食店においてメニューとして提供などもされています。

引用:消費者庁「プラントベース食品って何?」

コトバを理解しているだけで、食の知識が一気に広がったのは気のせいか(笑)この記事を通して、正しく理解するコトの重要性を感じてもらえたら嬉しい限り!

 

My name is…のアイスは、見ているだけでも食べたくなる理由がある

「季節の食材とか、新潟の食品とか、いろいろなモノを掛け合わせてアイスを作ったりもしています。プラントベースという軸にこだわっていますので、どれも安心してお召し上がりいただけます」

甘酒ジンジャー、酒粕バナナ、ゆず白味噌、柿アールグレイ、苺カルダモン、梅ジャスミンなど、聞いたことがないフレーバーぞろい!撮影をした2023年10月末はこんなラインアップ(一部)であった。

アイスだけで楽しむ以外に、ドーナツやパンなど「アイス+α」で広がる魅惑の甘〜い世界も発信。季節限定のメニューも考案中で、新商品の発表はInstagramにて告知していくようだ。

 

よき思い出=原体験が社会課題解決の架け橋になるべくアイスを作る

改めて疑問に感じてしまうのが、なぜアイスクリーム屋なのか、である。唐突だけれど…きっかけ話を聞いてみた。

▶万凛さんのきっかけ話
「きっかけは祖父母が営んでいた農業でした。幼い頃から売り物にならない変わった形の野菜を家に送ってもらっていて、形はおかしいけど美味い!味の記憶がずっと残っていて、ふと『アイスクリームであれば、どんな食材にもマッチして、変な形でも美味さを伝えられる』と思いはじめました。そして、『これらの野菜とか果物をアイスクリームに加工すれば、保存期間も延びていくし、商品化もできるなぁ」ってより深く考えるようになったんです』

夫婦で新潟に移住した後は、さまざまな農家を訪ね、新潟の農業に対する現実を知るべく、たくさんの話を聞いた。いわゆるリサーチであった。

「B品の販売先がなかったり、収穫せずに放置している柿や梅を狙った熊が山から降りてきたり、動物たちに畑を荒らされたり、作ることも売ることもいろいろな視点で悩みがあるんだと改めて実感しました。話を聞くほどこの課題を解決するために役立ちたいと強く思うようになり、自然と行動に移していったような…です」

 

▶萌々さんのきっかけ話
「東京には新しいモノとコトが集まっていて、この先もその集積具合は加速して、人も仕事も東京一極集中って構図は変わらないんだろうなって。私たちは広告業界にいて、情報が消費されている状況を肌で感じながら…誰もが感じるコトだと思いますが、普遍的なモノ、本質的なコトに関わっていきたいと感じるようになりました。若い時の海外経験があったから、ボーダレスな見方をしていきながら、距離的な分断もそんなに意識せず、ごく自然に地方で暮らすってコトが選択肢にあり、それで決心したんですよ。新潟にこだわっているワケではなく、地方の独特のスピード感とコミュニケーションこそ、自分たちに合っているんだなって」

というコトは、プラントベースアイスにたどり着いたのは偶然ではなく必然で、膨大な情報量と人間関係から感じられた違和感から、万凛さんと萌々さんの種が芽を出し、花を咲かせた、というコトだろう。…ちょっとわかりにくい文章ですみません!

「そんな感じです!」(おふたり)

 

青柳夫妻の次なるステージを目指して

「どんな段取りが必要で、どのような許認可が求められるのか、アイスクリーム店開業の基礎知識を調べつつも、知人友人のお店に行って聞いたりしていました」

お店を持つか、ECサイトから始めるか、創業に使える補助金を活用してみるか…。事業立ち上げへ向けた準備をしていく中で、どうやったらイメージ通りに進むか画策した。最初の壁は製造許可。ECを展開するにしても、お店を持つにしても、製造場所が必要。保健所に聞いて初めて知ったコトもあったし、事業として取り組む際に気を付けなければならないコトも、実際に動いてみたからこそ知ったコトが多かったという。また、どのエリアに拠点を持つか、という場所的な見解も重要だが、家賃や経費といったバランスも視野に入れつつも、事業全体の規模感を把握しなければならない。また、どうやって売るか=販売戦略についても考えるコトが求められつつも、その点においては経験による自信もあった。

「新潟でプラントアイスを売る!という思いをたくさんの人に伝えていきました。そうしたら、イベントに出てみない?と声をかけてもらえるようになったりして(笑)開業前のテストマーケティングとしてはすごく貴重な体験でした。『美味しい~』って言ってもらえてすごく嬉しかったですし、Instagramにアップしてもらったりして。数々のテストをやらせていただきながら、不安だったことが自信に、迷いが決意に変わっていきました」

お客様と人脈が広がっていく中で、実店舗はあるのか聞かれることが多くなってきた。物件は探しつつも、ご縁があれば…という状態が続いた。そんな中、事態は急変する。

「とある知人から『こんな計画があるんだけど』と話をいただいたのが今のお店。嬉しい反面不安もありました。ですが、念願の場所を持てる喜びの方が上回っていましたし、またとない機会のためYESとお応えしつつ、みんなとご一緒したいと思うようになりました」

オープンへ向けた準備が一気に進んだ。場所が定めれば次は資金調達。その次はメニュー構成、売り方、ディスプレーへ。同じ空間に出店するほか2店舗のオーナーとも話が進みつつ、ふたりのお店の構想は実現するコトとなった。2023年8月10日、『My name is icecream』はついにオープンした。

暑い時も、寒い時も、
いつでもアイスを食べたくなる。
体に優しいなんて言われなくても、食べてみると伝わってくる。
「季節によって新味出しますよ、ぜひ何回でも!」

自分から魅力を伝えていく姿勢は、
今までの経験を通してしっかりと理解している。
だからこそ、お店を持つだけでは満足しない。
「ネットも、ふるさと納税も、私たちから売り込んでいかないと!」

この美味しさなんでしょう。
食べたことないなぁ。
青柳さん、何玉でも乗っけてほしいんですけど…。
「食べすぎ注意!ほどほどに!」
そうですよね、体に優しくても体重が…。失礼しました。

 

青柳万凛さん・萌々さん

栃木県出身の万凛さん、新潟県出身の萌々さん。万凛さんが所属していた会社のイベントで出会い交際スタート。東京生活に疑問を抱きはじめ地方へ行くことを決意。将来的なコトを考え、話し合った結果、2022年に萌々さんの実家がある新潟へ移住。2023年夏に念願の路面店をオープンした。

My name is ice cream
新潟市中央区西堀通4-259-58西堀青藍館
11時~18時、水曜休み
※営業時間や定休日は変わる場合があります。最新情報はInstagramをご確認ください
Instagram

 

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