「バリバリ稼いでいきたいっすねー(笑)」(柳さん)
「まぁー柳さんの言うことですから」(内藤さん)
いい意味で名コンビの柳さんと内藤さん。ぼんやりとしている風に見えるけど意志は固く、やると決めたらひた走る。と言いつつも、悩みに悩んで結局は決められなかったりするコトは当然ある。仕事一筋で歩んできたからこそ、必要最小限のインプットにとどめていたからだ。
「普通はどうなっているとか、一般的に何が選ばれているとか、そういったコトが分からなかったです。社会人になってから1つのサロンに所属していましたから、良くも悪くも自分たちだけの世界になってしまった。もちろん、友人知人とかほかのお店の人とか交流がないワケではなく、かといって毎日毎週飲みにいったり出かけたりって…ないですね。毎日変わらない暮らしをしていたからか…って。こういうコトって皆さん、ありませんかねぇ?」(柳さん)
「無頓着なんでしょうか、柳さん。他を知らないから判断しようがないので、まずは調べたり聞いたりしないといけなかったんです。私?私は、私なりに努力はしましたよぉ(笑)」(内藤さん)
そんなワケはなく、ふたりは顔には出さないけれど一生懸命調べたり聞いたりしていた。用意周到に進めながらも、分からないコトは書き出してちゃんと頭の中に叩き込んでいた。柳さんがいつも持ち歩いていた『ヤクルトスワローズの自由帳』、内藤さんがカバンに入れていた『ロルバーンのノート』を見れば、その努力たるや!である。
「独立へ向けた準備は、これから立ち上げる自分たちのサロンの計画だけではないと痛感しました。お店のコト以外に、開業届の手続きとか保健所の確認とか物件の調査とか、『視点を変えると、こんなにやるコトがあるのか!』と驚きました」(柳さん)
「予定を立てると見えてきたんですよ。どのタイミングで何を考えて、どう動けばいいのかって。ただ、前提として『いつ、何を、どうやって』ではなくて、『なぜ』であったり、『だから…』とか、『つまり…』という入り方をしないと自分自身が納得して行動できないというか、本質の理解ですよね。なぜ、自分は、これを、いつまでにやり遂げなければならないのか。そういう考え方に切り替えていくと、すっと動けるんですよ。ほんと」
言われるがままではなく、ネットに書かれているからでもなく、ちゃんと考えながら動いているおふたり。会うほどにたくましくなっています!
あっち行ったり、こっち行ったり、遠回りしながら最後は真っ直ぐ
「物件選びがすごく大変でした。考えていた場所にはまったくなく、ちょっと離れたところに空き物件があっても条件に合わなかったり。難しいんですね。みんなどうやって探しているんでしょう」(内藤さん)
独立開業の準備のキモ、それが物件。地理的なコト、交通事情やアクセス、周辺住民の認識といった、あらゆる角度で物件を見なければならない。また、その物件、その場所で本当にいいのか覚悟が必要。それもそう、サロンの場合は内装工事やシャンプー台などの設備に結構な費用が掛かるからだ。こだわり抜くと数百万円、いや、桁は4桁になることも少なくない。
「見つからない状態がしばらく続いていたので、本当に独立できるのだろうかと不安でした。その後、ご縁があってこの店舗と出会えたのですが、出会えた後も本当にココでいいのだろうかって考えるコトもあるほどです。それほど心配症なんです(笑)」(柳さん)
最終的な物件候補は新潟大学近くの場所。駅から新潟大学まで登校する通学路にあり、周辺には大学生が住むアパートや住宅がある。また、飲食店にも囲まれているためお店の存在を知ってもらうには好条件。ただ、目の前の駐車場が広いため、やや奥まった外観になっている。
「看板、付けた方がいいですかねぇ。車の通りって、どっちの方向からが多いかなぁ。ちょっと離れたところにもお店の案内看板、いるかなぁ」(柳さん)
「私たちのコトを知っている人には直接言えますが、新規のお客様には知ってもらわないといけない。看板は設置した方がいいですって」(内藤さん)
物件を探し始めて数カ月、ようやく決まった。「こんなに時間がかかるなんて思ってもいなかったです」とふたり。なかには数年探しても見つからない人がいるくらいだから、柳さんも内藤さんもラッキーだったのではないだろうか。
夢だったサロンの輪郭がだんだんとクリアになってくる
物件が決まると、今度は内装のイメージや提供メニューを考えたり、それこそ資金調達へ向けた創業計画書を考えたり、準備は本格化してくる。なんとなくざっくりと描いていた数カ月間の構想を実際に描き始めるフェーズに移行。見積もりを取って比較してみたり、キャッシュフローを考えながら資金計画をシミュレーションしたり、考えていたことが数字になって表現されると夢だったサロンの計画がふたり色に変わっていく。
「内藤さんは女性の特化したメニューを提供しますし、私は今まで通りのサービスにプラスアルファの付加価値のあるメニューを考えています。そんなプランを描きながら、椅子、シャンプー台、ラウンジスペースといった空間に対して具体化していきました」(柳さん)
「価格って重要ですよね。その金額がお店の価値を決めるってあるじゃないですか。安く設定するとその分、薄利になりますし、場所柄もあって高すぎてもいけませんし。それこそ、戦略を練らないといけませんよね」(内藤さん)
サロンのスペックを考えるコトも大切だが、創業計画書において求められるのは〝サロンが長く続けられるかどうか〟である。顧客をどうやって伸ばしていくかと考えたり、どうやってサロンを知ってもらえるかと情報戦略を考えたり…頭から煙が出るほど考えなくてはならない。
「分かります!インスタだけではダメだって(笑)」(柳さん)
「そうなんですよね、みんなが見ていると思ってはいけませんし、広告出稿をしたからといって気づいてもらえるなんて信じ込んでもいけないし、ふたりで何ができるのか、じっくりと考えても…出てきません(泣)」(内藤さん)
こうしてふたりのサロンはオープンへ向けて着実に準備を進めていった。
感無量!感激!から仕事モードへ。もっと先へ、新たなる夢を求めて
2024年元日、能登半島沖を震源とした能登半島地震が発生した。ここ新潟市も甚大な被害を受け、道路が裂けたり、住宅が倒壊したり、また、液状化や住宅の傾きがいろいろな場所で見られた。新年のお祝いムードは一変した。
「さぁオープン!というタイミングで元日の地震。西区は報道の通り被害が大きく、お店どころではない雰囲気も漂っていました。お店は床がちょっと動いた?って感じのヒビっぽいところがあるようでないようで…そんなに被害は受けませんでした」(柳さん)
「お客様の状況もありますので世の中の動向に配慮しながらゆるゆるとオープンしました。今は復旧へ向けて動き始めている最中なので、みんなに元気なところを見ていただきたく、頑張って前を向いて歩いています」(内藤さん)
そんな中、念願のサロンはオープン。振り返ると仕事もプライベートもいろいろなコトがありすぎた。そしてこの地震。ふたりにとっていろいろなコトが、想像以上にたくさん起きたに違いない。だけど、夢のサロンがオープンして、お客さんも増えてきて、目指す場所が見えてきた。さらに上を求めて、ふたりの瞳は輝き続けることだろう。
行き詰ったこともあったけど、
肩の力を抜いたらすっと動けるようになった。
ほかの事情が分からないなら、
分からないなりに突き進んだ。
「柳さん、それ本当ですか?って何回も聞いた気がします」(内藤さん)
「大丈夫でしょ、大丈夫。気にしすぎても、いや、気になるか!」(柳さん)
久々に会ったふたりの顔を見ると、
お疲れだけど、満たされている表情だった。
ふたりで歩き始めたからこそ、の顔だ。
「照れますねぇ」(おふたり)
満たされるってねぇ~。
ヒューヒュー!
柳和明さん、内藤有里さん
柳さんは十日町市、内藤さんは長岡市出身。それぞれの理美容関係の専門学校を卒業後、就職先で出会う。自身のサロンを持つことを夢に描きながら日々研鑽。2024年1月に『美容室sol.sol.』オープン、そして同年、入籍・結婚した。おめでとうございます!
美容室sol.sol.
新潟市西区五十嵐1の町6684-1角蔵ビル1階B号室
9時~19時、月曜・第1・3火曜休
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