どの阿部さん?と思うかもしれませんが、あの阿部さんである。「新潟 古町 ワインバー あべさん」と検索すると…「あ~!あの阿部さん」と懐かしむ人も多いのではないだろうか。(古町で飲み歩いていた人ならご存知!)〝あの阿部さん〟とは、古町エリアで『わいんばーあべ』を営んでいた阿部一博さん。15年ほどワインバーを営んでいたが、2025年3月15日に閉店。「あの阿部さんは何処へ?」と街のウワサが飛び交う中、同年4月18日、西区寺地に『寺地食堂』をスタートしていた。

「当時の常連さんに伝えきれないままオープンしました。メディアに少しずつ出演していますので、そろそろ常連さんが見つけてくれるかなって(笑)」

阿部さんとは初対面ではないような気がしてならない。筆者が昔、お店取材をさせていただいたような…飲み会の時に誰かに紹介されて行ったような…どこかで会っていたはずだ!

「お会いしていた!というコトにしましょう」

バーのマスターから食堂の大将に転身した阿部さんだが、立ち居振る舞いはバー時代のまま。笑顔絶やさず、ちょっと先回りをした気持ちのいい接客、お客様との間合いをはかりながらのサービス、そして職人らしい仕事。ちょっとおかしな表現になるが〝一通り経験してきてたどり着いた濃いぃ〜味を楽しめるお店〟という感じだろうか。会えばその世界感が伝わってくる。

「バー時代はそんなに料理に対して力強く思いを込めていた、というワケでもないと自分では思っていますが…振り返ってみると…常連さんに好評でしたね」

寺地食堂の看板メニューは出汁角煮とスパイスカレー。この2つを聞いて「ん?」と。そりゃ感じますよねぇ、料理への想い。ねっ、阿部さん!

「ジャンルとかカテゴリとか、そういう話ではなくて〝阿部〟なんです(笑)」

 

ワインの道を歩き続けて辿り着いた至高のワイン3本とは!?

食堂に転身したワケを聞いていると、時代の変化に合わせた仕事の在り方、自身の生き方が伝わってくる。

「んーいろいろなコトが頭に浮かんできるのですが、3つあります。1つ目としては『年齢的に夜が厳しくなってきたコト』です。それこそバーって日中は食材の調達や仕込み、お店の掃除や整理整頓、連絡のやり取りがあって、準備が終えてオープンですって時間が19時。で、クローズの時間は定めていましたがきっちりと終わることなんてないですよね。お客様がいればお付き合いもしますし、営業終了後は後片付けがありますので、家に帰る頃には朝、という日も少なくありませんでした。好きでバーの経営をしていましたが、年齢的に体が厳しくなってきて。特に深夜がキツかったです」

筆者も以前は22時以降でようやく仕事モードではあったが、現在は超が付くほどの朝方タイプのためよ〜く分かります、そのお気持ち。

「昼の事業に切り替えないと、コレは持たないなって(汗)」

仕事のスタイルというよりは年齢的にってコト。自然と朝方になっていくんですねぇ〜。

「2つ目は『自宅の近所でお店がしたいコト』です。ちょうど近所にお店があって、ずっと狙っていたんですよ。いつかこの場所でお店ができたらいいなって。そうしたら、たまたま物件が空いた!コレはチャンスだと思いましたね」

出勤時間0分(数歩)は良くも悪くも快適である。

「そして3つ目は『最高のワインと出会えたコトでやり切った!』です。ワインの世界は飽くなき探究心で知るほどに魅せられていくもの。値段も年代も、それはそれは幅が広い。そんな中、赤、白、シャンパン、それぞれ〝誰にオススメしても満足してもらえる最高の3本〟に辿り着きました」

というコトで教えていただきました!

白ワイン:ブルゴーニュ コート・ドール

赤ワイン:クロノロジー

シャンパーニュ:キュイエ オリジネル

※セラーで発見できなかったため、力強く文字でお伝えしています

話を聞いているだけで飲みたくなるのは気のせいではない!阿部さんの語りにどんどん吸い込まれていく自分がいた。

「寺司食堂のセラーにありますよ」

阿部さん、なんですかこのセラー!食堂にコレって!さすがですねぇ。

 

看板メニューのレシピをこっそり教えてもらいました!

ところで、阿部さんのお店『寺地食堂』の話である。まずは出汁角煮。角煮と聞くと醤油ベースでコトコト煮込んで、脂がトロトロ、肉はホロホロな感じが頭に浮かんでくるが、阿部さんの角煮はひと味どころかふた味も違う。

「出汁がどうやったら角煮に染み込んでいくのか試行錯誤しています。煮込む時間もいろいろと試しながら理想の味になるタイミングを見出していきました」

独自に開発しているこちらの料理も、もうひとつの看板メニューであるスパイスカレーも、レシピは隠しているワケでもなく、いつでも誰にでもオープンにしているという。

「皆さんの台所事情もありますから、レシピをお伝えしても私が作る味とまったく同じにはなりません。ぜひご家庭でもお試しいただきたいところです」

ということで、看板メニュー2品+レシピを公開!

 

出汁角煮

豚バラを米のとぎ汁とジンジャーエール、ネギとショウガを入れて煮込む。圧力鍋加圧30分減圧30分、その後、合わせ出汁の中に漬け一晩寝かして完成。※単品・弁当のテイクアウトあり

 

グリーンカレー

メイプロイ(市販)のグリーンカレーペーストを使用。(バンコクのシェフがコレが美味しい!とオススメしてくれたから)ココナッツミルクとココナッツウオーター、鶏ムネ肉、ナスを使用。水は味がぼやけるので使わないように※単品・弁当のテイクアウトあり

四季折々、ひと手間ひと工夫の料理も提供していきたいと意気込む阿部さん。今の季節限定の一品はパスタ。涼を感じるこちらは、トマトソースをなんと!かき氷にして山のようになっています!このように商品開発のイメージは膨らむ一方で、時間を作って試作しているという。

「限られた時間で何ができるか、ですね」

 

ホスピタリティーを追求し続ける阿部さん流〝粋な仕事〟

そういえば!阿部さんといえばスイーツの顔もある。事業計画書の話をしていく中でセットのスイーツが妙にお求めやすい価格帯で設定しているコトに気がついた。

「そんなに手間をかけていませんし、セットだからこそ気軽さが嬉しいですよね」

とはいうものの、ワインバー時代の写真を見てみると、それはそれは手の込んだスイーツがずらり!であった。そんなスイーツは『寺地食堂』でも、メニューを見れば一目瞭然だ。

「ワインを飲めば甘いものを食べたくなりますよね。ということでスイーツにもこだわるようになったのがきっかけです。パフェとか、バスクチーズケーキ、盛り合わせとか、いろいろとご用意しています」

 

話は変わり、阿部さんのビジョンをお聞きしていくと、これからの『寺地食堂』はご近所さんたちとどう向き合っていくか、にあるという。

「朝とか夕方、犬の散歩をしている人が多いんですよ。そういう人たちへ向けて、ペット連れの場合はお店がどうなっていれば喜ばれるか直に聞いて。テラス席にはリードフックを付けてペット可にしました。愛犬と一緒に行けるお店って、行きつけにしてくれそうですし、ペットコミュニティーにも口コミで伝わりそうだなって」

時代の変化に合わせて自身も変わってきた。変わるコトができた経験があるからこそ、自信を持って〝今、決断すべきコトを自分なりの解釈で正しく決断〟できる。

「『寺地食堂』がちゃんとこの地に根を下ろして、地元の皆さんに愛され続けるお店になったらと思いますし、そうするためにも通い続けてくれる必然性と言いますか。料理と人(=私)は磨き続けていかないといけませんよね(笑)」

 

阿部さんの名字のルーツを調べていくと

それはそれは!いろいろと面白い話が出てきて

〝あべさん〟と読みで調べていくと

さらに奥深いぃ〜話がたくさん見つかる

「そうなんです、料理にはご縁があるようで」

まさかこんなところに阿部さん!でしたが、

角煮を通して見えてくる仕事ぶりに感銘を受けました。

そうだ、もっと夢中になろう!

 

阿部一博さん

新潟調理師専門学校を卒業後、新潟市内のホテルで勤務後、フランス料理店を数店舗経験。ワインに魅せられて新潟市の古町にて『わいんばーあべ』をオープン。十数年後、地元に戻り『寺地食堂』を立ち上げ。

寺地食堂
新潟市西区寺地495-3
025-211-8226
10時~18時(金・土曜〜21時)※水・木曜休、駐車場3台
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