「どうしようかなって(笑)」
山際さんはアパレル一筋十数年その道を極めるべく、力いっぱい走り続けてきた。
「いろいろ考えますよね」

周りを見渡してみると、先輩後輩のみならず知人友人にも独立する人たちが出始めた。自分には関係ない、遠いコトだと思っていた。私たちは独立しないだろう、と思ったコトもあった。朝起きて、疲れが取れないままに出勤、出社したらいつも通りのルーティンな業務から接客、マネジメントまで忙しく動き続け気がついたら夕方、そして帰宅。遊びに出たり、友人とおしゃべりしたり、楽しい時間もあればじっくりと疲れを取る休息の時間もあったりする。職業柄、曜日感覚はあまりなく、仕事と生活のボーダーラインはあってないような感じの時もあった。そんな毎日を駆け抜けていると、ふと余白が生まれて自分を見つめる時間、立ち止まる時がある。
「人生、タイミングですね」

ベテランともなると、今までのお客様=顧客は相当数いるはずだ。だけど、いざ自分の独立開業となると、どこまで関係性を築けていたのか、これからもお付き合いしてもらえるのか不安になる。一線を退いてから時間が経っていると、連絡をしていいものか躊躇してしまう。メッセージを送りたいけれど…覚えていてくれているか…あ、今日はやめておこうか…いやいや、今送っておきゃなきゃ!という感じの葛藤といえばいいだろうか。
「そんなコト言っている時間はないんです!とにかく動かないと!」

自信を持って一歩踏み出せば何とかなる!
都会的なオシャレさを追求する〝山際さんらしい〟目利き
「お客様に伝えていきたい私の想い、取り扱いをさせていただきたいブランドや商品など、自分のお店のイメージは持っています。初めての創業ですから、お客様とブランド、それぞれしっかりと信頼関係を築いていきたいと思います」

アパレル主体の事業の場合、肝心となるのは何といっても取り扱いブランド数であったりサイズ、品揃えだ。競合を意識した差別化、優位性などのマーケティング要素を考えながら、自分なりのお店の色を出していく必要性がある。ネットショッピングが買い物傾向で主流になっているからこそ、特に、アパレルにおいてはECを活用するケースが多々あるため、店舗立ち上がりは慎重にならざるを得ない。

「接客ってすごく大切で、お客様の趣味趣向を把握しながら新しいコレクションになったら提案しつつも、何回も来店いただくための距離感というか、コミュニケーション力が問われます。そのため、双方向での意思疎通、対話力は日々磨いていかないといけません」

創業計画書の数字を見ながら時々目が鋭くなる時がある。販売計画を練っている時だ。
「月当たりの売り上げ目標は絶対○△◇円!利益も絶対○△◇円!と決めています。この数字をクリアできないと事業継続が難しくなるため、計画通り遂行できるように必死にならないといけません。必ず達成する強い意志を持ってやり遂げます。もちろん、達成することが目的ではなく、継続するために欠かせない数字であることは間違いありません」

なんだかギラギラしていて、かっこいいですねぇ〜山際さん!
直感的に感じた〝新天地〟は運命的な出会いだった
「なかなか物件が見つかりませんでした。それなりの広さや設備が必要になります。古町エリアを歩いているとシャッターが閉まっていたり、見るからに空き店舗の物件もあります。だけど、話を聞いたり、ネット検索していても…空いていない。少しはあるだろうと思っていましたが…こんなにないなんて!と感じていました」

話をして数カ月、物件はあったとしても家賃、面積、アクセス、条件など、希望する内容に合わない。そもそも物件数が限られていることもあり、市場に出ている物件から選ぶことは厳しい状況だったという。
「本当に見つかるの?と、不安になった時もありました。知り合い、不動産会社、ネット検索、考えられるコトは全部試しました。物件を探している人は同じような探し方をしていると思いますから、みんなそうなのかなって…」
そんな中でもいくつか候補が出てきた。実際に内見していくと分かってきたコトがあった。

「気になる物件は、まず足を運んでみるコト、大家さんや不動産会社の人と話すコトがとても大切。情報を見ているだけでは前に進まないコトに気がつきました。現地に足を運んで、中に入って、陽の入り方や風、付近の様子など、肌で感じないといけませんね。その場に立つと、気の流れのようなモノを感じますよね。直感としてこの場所で事業をしているコトをイメージできるかどうか、そんな視点でも見るようにしています」
ようやく見つかった物件は新潟市中央区寄居町、新潟中央警察署の迎えにあるビル1F。いろいろなショップが入居している一角に『stoa』はオープンした。

「周辺の環境、市街地からのアクセス、坪数、近隣店舗など、いろいろと考えた結果、ココだなって。内見する時、中に入った瞬間に自分が接客していたり商品が並んでいたり、という光景をイメージできました。ようやく決まった!と、ホッとしています」
いつオープンするか逆算しながらメーカーと交渉したり、仕入れたり、工事の発注や資金調達など、実に多くのコトを併行して進めてきた。どこかがつまずくと全体に影響が出て八方塞がり!なんて事態もあったという。
「やっとオープンできました!」

いろいろありました。
悩んだり、不安になったり、
思うように話が進まなかったり。
「前を向いて歩かないと」

準備したばかりの頃は慎重派だったけど、
今は動きながらさまざまな視点で考えている自分がいる。
「始まっているんです、もろもろ!」
Don’t stop me now!ですね、山際さん。

山際沙織さん
新潟市出身。アパレル業界にて20年以上携わり、バイイングから店舗管理、情報発信やECサイト運用などに従事。デザイナーをはじめ、ブランドとの関わりも広く持つ。

stoa
新潟市中央区寄居町697-1 マンション北陸1F
12時〜19時、定休日はインスタグラムにて
Instagram
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